風に吹かれて

風に託すのは遠き夢 風に囁くのは儚き恋 風は形のない遠い記憶…

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

時は流れて

夏休みには、古い友に逢う。
それは、毎年の約束になっている。
彼女は中学と高校の同級生だった。
当時は交換日記を交わしていた。彼女からの返事が待ち遠しくてドキドキしながら日記帳を開いたものだった。
お互いに性格は違うのに、どういう訳か気があった。

最初に一泊の山登り(雲取山)に付き合ってくれたのも彼女だったし、上毛高原や藤原湖を巡り三国峠を歩いて越えてみよう、なんていう計画にも付き合ってくれたし、その足で憧れの尾瀬に一緒に行ったこともあった。

彼女との最後の旅になったのは、二十歳の記念にと、上野から夜行列車に乗り、東北を一周しょうという旅だった。
青森駅に降り、まず向かったのは八甲田山、山頂から湿原を巡り酸ヶ湯温泉に降りた。酸ヶ湯温泉は湯治客が滞在しているような鄙びた温泉宿だったのを覚えている。
そこから、奥入瀬の入り口のユースホステルに宿泊した。翌朝は、奥入瀬の遊歩道を十和田湖まで歩いた。
いくつもの滝を巡り十和田湖に辿り着いた時は、その大きさに胸が躍った。
「わぁ~!!海みたいに大きい!」そう叫んだ事を今でもありありと覚えている。
十和田湖の遠浅な岸辺を彼女と歩いた。
あまりにも透明に澄んだ水辺、ひたひたとゆっくり寄せるさざ波
目映い陽射しに、湖の岸辺の小石がキラキラと輝いていた。
わたしたちは、思わず靴を脱いで、Gパンの裾をまくり上げ、
裸足で歩いた。裸で水浴びしてる子どもたちがいて、なんだか南の島に上陸したみたいね。なんてはしゃいでいたよね…

そして、辿り着いた乙女の像…わたしたちが好きだった「智恵子抄」
あの高村光太郎が作ったんだよね…そんなことを話した。
  あれが阿多多羅山、
  あの光るのが阿武隈川。
  ここはあなたの生れたふるさと、
  あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒庫
そらで覚えていた詩を二人して口づさんだよね。

その晩は、十和田湖のユースホステルに泊まり、翌朝は五所川原を回り八幡田へと向かった。
山上の湿原、八幡平は、湖を巡る大きな湿原で、ちょうど晩夏の花々が咲き乱れていた。
尾瀬のような木道を辿っても、ほとんど人に会わず、まるでわたしたちだけの楽園のようだった。
とうとう、木道に寝そべって、高く澄んだ青い空を眺めた。
目の高さにある草を、爽やかな夏の風がさわさわと吹きぬけていくと、
わたし達の体の中を透明な風が流れていくような気がした。
耳元で、ミツバチたちが軽やかな羽音を立てて飛んでいた。
ひらひらと、飛ぶ蝶たち、揺れていたのは何の花だったのだろう…

本当は、この後、田沢湖や陸中海岸、岩手の小岩井牧場、そして、仙台まで、旅は続くはずだったけど…
八幡平の大沼と言うところにあるユースホステルで、管理人の奥さんが疲れて倒れてしまったので、臨時のボランティアのヘルパーを募集していた。
わたしたちは、一晩、相談しあって引き受ける事にした。
こうして、旅の残りの日々は、ユースホステルのヘルパーとして過す事になった。
ヘルパーといっても朝晩の食事の準備や部屋の掃除の仕事が終ると、後は自由時間に当ててもらえた。仲間のヘルパーや森林警備隊の青年達と、近くの焼山に登ったり、帰りはユースホステルまで、ヒッチハイクで辿り着く競争をしたりした。
生まれて初めてヒッチハイク。若さゆえの冒険だった。

夜は八幡平の星空の観測に連れて行ってもらったりした。
山上の広大な大地の上で降るような満天の星空を見上げ、星座を教えて貰いながら、いくつもの流れ星を眺めた。
それは例えようも無く美しい夜だった。わたしたちは歓声を上げながら流れ星をいくつも数えたのだった。

そんな忘れられない思い出と共に、帰りはまた、夜行列車に揺られて家路に着いた。
あれは、いったいどの辺りだったのだろう、帰りの列車の中で、わたしたちは楽しかった思い出を取り止めも無く話していた。
列車の窓の外は、どこまでも、どこまでも続く水田だった。
漆黒の夜空に、突然、音も無く光の花が咲いた。
それは、夏の終わりの遠花火だった。
だんだんと遠ざかっていく、遠花火を、わたしたちは言葉を忘れて眺めていた。
きっと、外はひとしきり虫の音など聞こえていたかも知れない。

いつも、計画を立てるのはわたしだった。夢見がちで、向う見ずで鉄砲玉みたいなわたしを、慎重派で理性的な彼女は適度にブレーキをかけながら上手くリードしてくれていたのだと思う。

その後、彼女は念願だった小学校の先生になり、今も天職の仕事を続けている。
わたしは、結婚してしまい。二人の旅は、この東北の旅が最後になった。

何年後かに、彼女はご主人とこの思い出の地を回ったそうだ。
あの八幡平の星空は美しいままだったと言う。
わたしはと言えば、まだ、訪れられずにいる。
もう一度行って見たいけれど、あのキラキラした青春の想い出は、そのまま残しておきたい気もする。

でも、いつの日か、彼女とふたたび、あの日のコースを思い出を辿るように巡る事が出来るかも知れないとも思う。
時は流れて…その時、どんな風に思うのだろう。

彼女とのおしゃべりは取り止めも無く、いつもこんな会話で終るのだった。
晩夏の一日を、奥多摩にある、ちいさな茶店の奥座敷で、目に染みる緑を眺めながら、わたしたちは過した。
お気に入りの、珈琲のおいしい静かなお店で。

IMG_4494.jpg

スポンサーサイト

« 茜空|Top|おめでとう »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kikyounomado.blog65.fc2.com/tb.php/182-0f181c8c

Top

HOME

桔梗(sizuku)

Author:桔梗(sizuku)
ブログ“風に吹かれて”へようこそ!
日々の想いや、懐かしい思い出などを綴っています。
山や森や里山に身を置き、心を遊ばせて
鳥や蝶や、小さな草花に日々癒されている
そんな、管理人です。
どうぞよろしくお願いします。
☆管理人のホームページ:Sizuku ONLINE よろしければどうぞ)

アクセス解析

お好きな曲を選んで 下のClickを押してくださいネ♪ BGMが流れます。

©Plug-in by PRSU

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。