風に吹かれて

風に託すのは遠き夢 風に囁くのは儚き恋 風は形のない遠い記憶…

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さよなら…八月

不定期な休日のアイリスは今週は水曜日と土曜日がお休みだった。
週末の土曜日のには、秩父路を一緒に歩く約束をしていたが、
アイリスが『八月が終わらないうちに、夏の最後の山歩きがしたいネ』と言う。

アイリスは一人でもでかけるつもりだったけれど、わたしも休暇を取って同行することにした。
娘ひとりでは、まだ、ちょっと心配だったのと、わたしも八月最後の山歩きをして夏に別れを告げたかったのだった。

御岳山のレンゲショウマには、まだ間に合うかしら?
それとも、海沢三滝巡りをしてみようか?
それとも日原の稲村岩に登ろうかな?
などと、あれこれ相談していたけれど、どうもあまりお天気が良くないようだ。
いつもは、晴れ女を自称するわたしだけれど、明日は晴れる予感がしなかった。
雨は降らないまでも一日どんよりした曇り空になりそうな予感がする…
奥多摩の森は深いので、曇りの日は暗くなりがちだった。
アイリスが不安がるといけないと思い、のんびりと巨樹めぐりをすることにした。
といっても、車の運転はアイリス任せ…アイリス、いつもありがとう。

まず、「天空の樹」と名づけた大丹波のツガの樹へとアイリスを案内する。
この巨樹は大丹波林道から細い入り組んだ路地を入った山の中腹に立っている。
遠くから眺めた姿は、周りの木々よりも頭ひとつ飛び出して佇んでいる感じがするのだった。


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アイリスは早速、カメラを向けていた。

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アイリスの撮った1枚。高度感が出ていて、いかにも村を見降ろしながら佇んでいる巨樹の姿が感じられ、いい写真だと思った。
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根元に目線を落として、撮っていたもう1枚の写真。
うん、これもなかなかいいよ!
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次の巨樹は、川井のカツラ。この樹は大丹波林道がその樹の上を走っている。
林道下の石垣から苦しげに体をねじ上げて立っているといった感じに見える。頑張って立っているから「ど根性の樹」と呼んでいる。

アイリスは、林道のガードレールから下を覗きこんで驚いた。
『え~!?この樹、どうやって立っているの?いったいどうして、こんな生え方をしているの?』
「びっくりでしょ?すごい樹だと思わない?きっと、この樹を切り倒すのは忍びないからこんな形で林道を作ったのでしょうけど、できればもう少し避けて道を作ってあげれば良かったのにと思うわよね…」
アイリスはじっと、その樹を見つめていたが、カメラは向けなかった。
きっと、痛々しい姿を撮る事ができなかったのだろう。
わたしもまた、カメラを向けなかった…。
道端には白百合の花が揺れていた。

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長閑な田舎道…山里のこんな道がわたしはとても好きなのだった。
アイリスはどんどん歩いていってしまった…(^^ゞ
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次に向かったのは、日原街道。奥多摩駅を過ぎてつづら折りの山道を娘の小さな愛車は喘ぎながら登っていった。
「ほら、そこに作業小屋があるでしょう。少し広くなってるからその近くに止めてみて。」と言うわたしに、アイリスは『え~?こんな所に止めて大丈夫なの?』と不安顔。
でも、ここから歩いていかなければならないから、何とか止めてみてね。と言うことでアイリスはしぶしぶ車を止めた。

そこから、谷側に細い道を降りてゆく、そして小さな吊り橋を渡り対岸へと渡る。
アイリスは、目を丸くして呆れ顔。
『おかあさん、いつもこんなところに一人出来てるの?』
「そうよ…」
『寂しくないの?今は変な人が多いんだから気をつけてよ。』
「はい…気をつけます。」
と、娘に注意されてしまった…(^^ゞ

小さな吊り橋を渡り2軒だけある民家の裏手の山にあるツクバネガシの巨樹の元へと登っていった。

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ツクバネガシとしては、日本で三本の指に入る樹だとか…
さすがに凄い迫力だった。
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次は、倉沢ヒノキに向かう。今度は倉沢林道の入り口に車を止めて歩いていった。20分ほど山道を登ると前方に突然大きなヒノキが天を突いているのが見えた。先を歩いていたアイリスは
『凄い!大きいね~』と息を呑んだ。
「この樹は千年ヒノキと呼ばれているらしいよ。」
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アイリスが撮った写真2枚。
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さて、千年ヒノキを後にして山道を降り始めたら、足元に散らばった小枝が目に留まったらしい。
アイリスは、小枝を並べて『Tree の Tよ』と笑った。

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「あら♪いいじゃない、他の字も作ってみようよ」と言う事で次々とアイディアを持ち寄って、英字を作っていった。

いつの間にかシトシトと小雨が降り始めていたが、木々の繁りがそっと枝を重ね合わせてくれたので、わたし達の上には雨粒は落ちてはこなかった。森の木々に守られて、わたしたちは親子で楽しい時間を過す事が出来たのだった。
ただ、木の葉を叩く微かな雨音だけがやさしく響いていた。

「Happy birthdayって作れないかしらね?」とかなり頑張ったけどちょっと無理そう(笑)でもHappy までは、何とか作れたみたい。
『おかあさんが、こんなに夢中になるなんて思わなかったわ。目がキラキラになってたよ』なんて、アイリスに言われちゃったけれど、あなたも無邪気ないい笑顔になっていたわよ(^^

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そして、最後は、日原林道をしばらく登ったところにある日原川とガニ沢の出合いにある、あの「風樹」と名づけたカツラの樹へと案内した。

アイリスが撮った3枚。
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そして、アイリス会心の1枚。スローシャッターでの撮り方に初めて挑戦した1枚だ。
アイリスは、わたしの写真の中に、白い竜がいたよなんて言っていた(笑)
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川岸に佇む「風樹」は、今日も風を聴いていた。
やわらかな緑が美しくて…わたしはじっと眺めていた。
アイリスは若いから、まだ、わたしが思うほどには巨樹に対する想いは感じないのだろうと思った。わたしも若い頃は、山歩きのなかで何気に巨樹を素通りしていたのかも知れない。
それでいいと思う。でも、いつの日か、悲しみや困難にぶつかった時、ふと、巨樹の事を思い出す時があるだろう。
それは、何十年も後の事かも知れない。
その頃、もう、わたしはいなくても、きっと、この巨樹たちは変わらずに威風堂々とこの地に生き続けている事だろう。
いつかアイリスが、この巨樹の前に立ち、勇気や優しさを受け取り、わたしと訪れた事を思い出してくれたらと思う。
母に見守られているようだと感じてくれたならいいなと思う。
なんだか、そんなことを考えてひとりで、胸を熱くしてしまったけれど、アイリスは、熱心にカメラを向けていた。


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シダと苔に覆われた森の中には。ツリフネソウが咲いていた。
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アイリスは、朽ちて葉脈だけになった葉っぱを見つけた。
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水辺の巨樹。カツラと言う樹は水辺を好むらしい。
辺りに、ふっと香ばしい匂いがして、わたしはあることを思い出した。
「ねぇ、アイリス、お醤油の匂いがするでしょう?」
『うん、するする、でも、どうして?』
「あのね、カツラの樹は秋になるとお醤油の匂いがするんですって、別名“醤油の樹”とも呼ばれるらしいよ。」
『へぇ~!不思議ね。』
「お醤油の匂いがするって言う事は、やっぱり秋なんだね。」

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森の中にはもう、小さな秋が満ち満ちていて、夏の名残りは消えて行こうとしているような気がした。
車に戻ってみると、フロントグラスに、小さな黄色い葉が落ちていた。
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さようなら、八月…
わたしは、小麦色に日に焼けた自分の腕を眺めた。
それが、この夏を走り抜けた…ひと夏の証のような気がした。

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コメント

会話

アイリスさんとsizukuさんとの何気ない、でも暖かで謙虚で優しい眼差しの会話を楽しく読みました。親子に限らず感性を重合わせて話せるって、すてきなことですよね。私もいつの日か息子とこんなふうに歩きたいと思いました。

sizukuさん 「八月の終わり」読まして戴きました。
楽しい巨木めぐりでしたね。
アイリスさんの「おかあさんがこんなに夢中になるなんて思うわなかったわ、目がキラキラになってたよ」の言葉がすべてです。ウンウン!

こんばんは。

いい仕事(旅)してますねぇ~~(笑)

時空を共にする、
絆が深まる最高の術ですね。

sizukuさんと娘さんの大事な至福の時間が
これからもずっと続きますように^^


shuさんへ

shuさん、こんばんわ。いつも優しいコメントをありがとうございます。
何気ない会話、何気ないひと時が、深くこころの奥底に緩やかに流れる川になるのかもしれませんね。そして、こころを潤してくれる…。
娘とのこんな時間を大切にしたいと思います。
shuさんと息子さんたちの関係も、とっても素敵に映ります。
寡黙だけれど力強い、お父さんと息子の絆もいいものですよね(^_^)

ジークさんへ

ジークさん、いつも読んでいただいてありがとうございます。
娘との巨樹巡り、わたしの独りよがりになってはいけないと思っていますが
娘も楽しんでくれているので、良かったなと思います。
一人の時とは違う、新たな発見もありますし、娘から教えられる優しさもあります。
自然の中ではありのままの澄んだ心になれるのかもしれません。
そして、何百年も生き続けた巨樹の前では、わたしも娘も小さな子ども同然なのだなぁって思います。

りゅうさんへ

りゅうさん、いつも応援してくださってありがとうございます。
時空を共にする…素敵な言葉ですネ。
わたしと娘とは、感覚が似ている気がします。
そして娘も大人になってきて、今は、母と子というより、仲間と言う気がします。
たぶん、わたしの一番の理解者は娘かもしれないし、わたしも娘の良き理解者でいたいです。まぁ、たまには、ちょこっとは喧嘩もしますけど…(^^ゞ

かわいい娘さんですね♪

しーちゃん、かわいい素直な娘さんと二人の巨樹巡り、素敵♪
しーちゃんのお気に入りの場所を一緒に楽しそうに回ってくれる娘さんもまた素敵♪
いつもお二人のカメラ紀行を読ませてもらっていると私ももう一人娘がほしくなってしまいますね(^o^)


ちかちゃんへ

ちかちゃん、こんばんわ(^^♪
コメントありがとうm(__)mうれしいです。
わたしは、なかなか行けなくてごめんね。でも、娘とこんな風に楽しくちいさな旅をしています。
ささやかな旅だけれど、一緒に出かけられるしあわせを大切にしなくちゃね。
ちかちゃんも、娘さんが遠くにお嫁さんに行ってしまい寂しいね。
でも、ちかちゃんには、仲の良い姉妹がいてうらやましいなぁ。。。
お母様もお元気ですしね。お互い、思い出の旅を楽しみましょうね。
そうそう、もうすぐ尾瀬やね~♪ご主人様との思い出の尾瀬を楽しんできてね。
お土産話、待ってるからね(^_^)

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